公務員の退職金のリアル【自己都合で辞めた当事者が計算式・税金・手取りを解説】

公務員の退職金のリアル【自己都合で辞めた当事者が計算式・税金・手取りを解説】
目次

「公務員は退職金がたっぷりもらえる」——そんなイメージを持っている人は多いと思います。

私も、かつてはそう思っていました。実際に自分が公務員を辞めるまでは。

私は公務員を自己都合で退職し、IT業界へ転職しました。そのときに初めて、退職金が「勤続年数」と「辞め方」で大きく変わること、そして思っていたほど単純な世界ではないことを、当事者として知りました。

ちなみに私の退職金は、約11年勤めて約240万円でした。「公務員=退職金2000万円」というイメージとは、ずいぶん違う金額です。なぜこの金額になるのか。その理由が、これから説明する「勤続年数」と「辞め方」、そして税金のしくみにあります。

この記事では、公務員の退職金がどう決まるのか、税金はどうかかるのか、受け取りにはどんな手続きが必要なのかを、実際に受け取った立場から解説します。特に「定年まで勤めずに途中で辞めた場合」にいくら変わるのかは、転職を考えている公務員の方がいちばん気になるところだと思うので、正直に書きます。

※本記事は制度のしくみを一般的に解説するものです。具体的な金額は退職時の俸給・勤続年数・自治体の条例によって変わります。最終的な金額はご自身の人事・給与担当に確認してください。


結論:公務員の退職金は「勤続年数」と「辞め方」で決まる

最初に、いちばん大事な結論からお伝えします。

公務員の退職金(正式には「退職手当」)は、ざっくり次の3つで決まります。

  • 退職時の俸給月額(基本給のベース)
  • 勤続年数(長いほど支給率が上がる)
  • 退職理由(定年・自己都合・勧奨などで支給率が変わる)

つまり「公務員だから一律にいくら」という金額は存在しません。同じ役所に同じ年数いても、辞め方が違えば金額は変わります。

そして、私のように定年を待たずに自己都合で辞める場合、退職金は定年退職よりかなり少なくなります。 ここを理解しないまま「公務員=退職金2000万円」のイメージで人生設計をすると、現実とのギャップに戸惑うことになります。

順番に見ていきます。


退職金の計算式:基本額+調整額

公務員の退職手当は、大きく次の式で計算されます。

退職手当 = 基本額 + 調整額

基本額:俸給月額 × 支給率

基本額は、退職手当の「本体」です。

基本額 = 退職日の俸給月額 × 退職理由別・勤続期間別の支給率

ポイントは2つあります。

ひとつは、ベースになるのが「退職日の俸給月額」だということ。これまでの平均ではなく、辞めるときの基本給がベースになります。だから昇給して給料が上がってから辞めるほど、基本額は大きくなります。

もうひとつは、「支給率」が勤続年数と退職理由で細かく決まっていること。勤続年数が長いほど支給率は上がっていきますが、後で書くように、自己都合退職だと同じ年数でも支給率が低く設定されています。

調整額:在職中の貢献度に応じた上乗せ

調整額は、在職中の役職や貢献度に応じて加算される部分です。

ここで注意したいのが、勤続年数が短い自己都合退職では、この調整額が支給されないか、ごくわずかになるという点です。国家公務員の制度では、勤続9年以下の自己都合退職には調整額が支給されません。

短い期間で辞めると、基本額が小さいうえに調整額もつかない——だから「思ったより少ない」と感じやすいのです。


自己都合退職は支給率が下がる——転職で退職金はいくら減るか

ここが、転職を考えている公務員の方にとって、いちばん知っておいてほしいところです。

同じ勤続年数でも、自己都合退職は定年退職より支給率が低く設定されています。

具体的に、勤続年数ごとのおおよその支給率(退職時の俸給月額の何か月分か)を、自己都合と定年・応募認定で並べると、次のようになります。

勤続年数自己都合定年・応募認定
10年約5.0か月約8.4か月
15年約10.4か月約16.2か月
20年約19.7か月約24.6か月
25年約28.0か月約33.3か月
30年約34.7か月約40.8か月
35年約39.8か月約47.7か月

(国家公務員退職手当法に基づく支給割合に、現行の調整率0.837を反映した概算。退職日の俸給月額に上の月数を掛けた額が「基本額」のおおよその目安です。出典:e-Gov 国家公務員退職手当法

たとえば同じ勤続20年でも、自己都合は約19.7か月分、定年は約24.6か月分。退職時の俸給月額が30万円なら、基本額の目安は自己都合で約591万円、定年で約738万円と、150万円近い差になります。同じ年数を働いても、辞め方ひとつで退職金が変わるということです。

なお、俸給月額・勤続年数・退職理由を入れるだけで、退職金と税引き後の手取りの概算を計算できる簡易ツールを作りました。自分のおおよその金額を知りたいときに使ってみてください(入力はブラウザ内だけで計算され、外部には送信されません)。

公務員 退職金 簡易シミュレーターを使ってみる

私自身の例で言えば、約11年勤めて自己都合で退職し、受け取った退職金は約240万円でした。もし同じ職場に定年まで勤め続けていれば、勤続年数も支給率も上がり、退職金はこの何倍にもなっていたはずです。

「定年まで勤めていたら、退職金はこれよりずっと多かった」。この事実は、転職を決めたとき正直に受け止める必要がありました。

ただ、ここは冷静に考えるべきところです。

退職金が減る分だけを見れば「損」に見えます。でも、定年まで勤め上げる前提の退職金を満額もらうには、当然ながら定年まで勤め続けなければなりません。途中で辞めて別のキャリアを選ぶなら、その差額は「自由を選んだコスト」とも言えます。

私は、退職金が目減りする分を、転職後の給与の伸びや市場価値で取り返せるかという観点で考えました。退職金の数十万〜数百万円の差を、その後の働き方でどう埋めるか——そう捉えると、退職金の減少だけで転職をためらう理由にはならない、というのが私の結論でした。


退職金にかかる税金:退職所得控除と「2分の1課税」

退職金は給料と同じようには課税されません。退職金は税制上とても優遇されています。 ここを知っておくと、手取りの見え方が変わります。

退職金にかかる税金は、次の3ステップで決まります。

ステップ1:退職所得控除を引く

まず、勤続年数に応じた「退職所得控除」を退職金から差し引きます。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

※勤続年数に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げて計算します。

たとえば勤続10年なら控除は400万円、勤続20年なら800万円。退職金がこの控除額の範囲内なら、退職金には税金がかかりません。

勤続年数が短いと退職金そのものは少なくなりますが、その分この控除でほぼ非課税になりやすい、という側面もあります。

実際、私のケースがそうでした。勤続約11年なので、退職所得控除は40万円×11年=440万円。退職金は約240万円で、控除の枠内にすっぽり収まっていたため、退職金にかかる税金はゼロでした。源泉徴収票は受け取りましたが、税額は引かれていません。退職金が少ないことは、税金の面ではむしろ有利に働いたわけです。

ステップ2:残りを2分の1にする

控除を引いてもまだ残額がある場合、その金額をさらに2分の1にします。これが課税対象になる「課税退職所得金額」です。

課税退職所得金額 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2

退職金を引いて、さらに半分。給与所得に比べて、課税のベースが大きく圧縮されるのがわかると思います。

※ただし、勤続5年以下の短期退職の場合は、この「2分の1」が一部使えない特例があります(控除後300万円を超える部分には1/2を適用しない)。短期で辞める人は、この点も頭の片隅に入れておくと安心です。

ステップ3:分離課税で税額が決まる

最後に、課税退職所得金額に税率をかけて税額を計算します。退職所得は他の所得と分けて計算する「分離課税」なので、給与など他の所得と合算されて税率が跳ね上がる、ということがありません。

退職所得控除 → 2分の1 → 分離課税。この3段構えのおかげで、特に勤続年数が短い人の退職金は、税金がほとんどかからないか、かかっても少額で済むことが多いのです。


受け取りの手続き:「退職所得の受給に関する申告書」を出すだけ

税金のしくみは少し複雑ですが、受け取り時の手続き自体はシンプルです。

ポイントは、「退職所得の受給に関する申告書」を提出するかどうかです。

  • 提出した場合:勤務先が退職所得控除や2分の1課税を反映して正しい税額を計算し、源泉徴収してくれます。原則として自分で確定申告をする必要はありません。
  • 提出しなかった場合:退職金の支払額に対して一律 20.42% が源泉徴収されてしまいます。本来より多く引かれることが多いので、その場合は自分で確定申告をして払いすぎた分を取り戻します。

この申告書は、退職時に勤務先から案内されるのが普通です。私のときも、退職手続きの書類一式の中に入っていました。提出した結果、私の場合は控除の枠内で税額ゼロ。源泉徴収票は手元に残りましたが、確定申告も不要でそのまま完結しました。忘れずに提出すれば、退職金の税金まわりは基本的に勤務先が処理してくれます。

「退職金にも確定申告が必要なのかな」と身構える人もいますが、申告書さえ出していれば、多くの場合そのまま完結します。ここは過度に心配しなくて大丈夫です。

なお、退職金とiDeCo(個人型確定拠出年金)の一時金を近い時期に受け取る場合、退職所得控除の計算で不利になるケースがあります。私がiDeCoに慎重な理由のひとつもここにあります。気になる方はこちらもどうぞ。

iDeCoをやらずNISAに集中している理由


当事者として実感した、退職金との向き合い方

最後に、実際に公務員の退職金を受け取った立場として、感じたことを正直に書いておきます。

ひとつめは、退職金は「もらってから考える」では遅いということ。辞めると決めてから「思ったより少ない」と気づくより、辞める前に自分の支給率と俸給からおおよその金額を把握しておくべきでした。人事・給与の担当部署に聞けば、見込み額の試算は出してもらえます。

ふたつめは、退職金は使い道を決めてから受け取るべきだということ。まとまったお金が入ると、つい気が大きくなります。私は、退職金を生活防衛資金と新生活の準備に充て、残りは長期の積立に回すと先に決めておきました。使い道を決めずに口座に置いておくと、なんとなく溶けていきます。

みっつめは、退職金の額だけで転職の損得を判断しないということ。たしかに自己都合退職で退職金は目減りします。でも、私にとってはそれ以上に、新しいキャリアで得られる経験・スキル・将来の選択肢のほうが価値が大きいと判断しました。お金は大事ですが、退職金という一時金だけを基準にすると、人生の大きな決断を見誤ります。

退職金は、これまでの働き方の集大成であると同時に、これからの暮らしの元手でもあります。だからこそ、感情ではなく数字で向き合うことをおすすめします。


まとめ:公務員の退職金の要点

最後に、この記事の要点を表にまとめます。

項目内容
計算式退職手当 = 基本額(退職時俸給月額 × 支給率)+ 調整額
支給率勤続年数が長いほど高い。自己都合は定年より低い
調整額在職中の貢献度に応じた上乗せ。勤続が短い自己都合では付かないことも
退職所得控除20年以下:40万円×年数(最低80万円)/20年超:800万円+70万円×(年数−20)
課税退職所得(退職金 − 控除)× 1/2。分離課税で優遇
受け取り手続き「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば原則確定申告不要
未提出の場合一律20.42%が源泉徴収 → 確定申告で精算
私の実例勤続約11年・退職金約240万円。控除440万円の枠内で非課税

公務員の退職金は、「一律でたっぷり」ではありません。勤続年数と辞め方で大きく変わり、税制では手厚く優遇されている——これが当事者として知った実像です。

転職を考えている公務員の方は、まず自分の見込み額を把握すること。そのうえで、退職金の増減と、新しいキャリアで得られるものを並べて比べてください。判断材料がそろえば、退職金の数字に振り回されずに、自分の人生にとって納得のいく選択ができるはずです。

おおよその金額を手早く知りたい方は、公務員 退職金 簡易シミュレーターもどうぞ。俸給月額と勤続年数を入れるだけで、退職金と手取りの目安がわかります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 公務員の退職金はいくらくらいですか?

勤続年数・退職時の俸給・退職理由で大きく変わるため、一律の金額はありません。直近のデータで見ると、国家公務員の定年退職者の平均退職手当額は約2,147万円(内閣人事局「退職手当の支給状況」令和5年度)。地方公務員でも、一般職員の定年退職(勤続25年以上)の平均は約2,212万円(総務省「地方公務員給与の実態」令和6年)です。

ただし、これはあくまで「定年まで勤め上げた人」の数字です。同じ国の調査でも、自己都合退職の平均は約304万円と、定年退職とは大きな差があります。私自身、約11年勤めて自己都合退職し、退職金は約240万円でした。途中で辞めると、定年退職のイメージとはまったく違う金額になります。正確な金額は退職時の俸給月額と勤続年数に応じた支給率で決まるので、人事・給与担当に試算を依頼するのが確実です。

なお、私が在職していた職場のOBの方からは「退職金は年々下がっている」という話も聞きました(この点は私自身では裏を取っていません)。ただ、これには制度的な背景があります。国家公務員の退職手当は、民間との格差を是正する観点から定期的に見直されており、2012年には支給水準が約2700万円から約2300万円へと、およそ15%引き下げられた経緯があります。地方公務員も国に準じて見直す自治体が多いため、「年々下がっている」という実感の背景には、こうした制度改正の流れがあるのかもしれません。

(参考:内閣人事局「給与・退職手当」退職手当の支給状況

Q2. 自己都合退職だと退職金はどのくらい減りますか?

同じ勤続年数でも、自己都合退職は定年・勧奨退職より支給率が低く設定されています。たとえば国家公務員では勤続25年の自己都合退職の支給割合が「28.0395」で、定年退職より低くなります。さらに勤続年数が短いと、調整額が付かない(国家公務員では勤続9年以下)こともあり、基本額・調整額の両方で差がつきます。

Q3. 退職金に税金はかかりますか?

かかる場合とかからない場合があります。退職金からはまず「退職所得控除」(勤続20年以下なら40万円×年数、最低80万円)が引かれ、退職金がこの控除の範囲内なら非課税です。控除を超えた分も2分の1にしてから分離課税されるため、給与に比べて税負担はかなり軽くなります。勤続年数が短いと退職金自体が少なく、控除内に収まって非課税になるケースも多いです。

Q4. 退職金を受け取るとき、確定申告は必要ですか?

「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、勤務先が正しい税額を源泉徴収してくれるので、原則として確定申告は不要です。提出しなかった場合は一律20.42%が源泉徴収され、払いすぎになることが多いので、その場合は自分で確定申告をして精算します。退職時の書類に申告書が含まれていることが多いので、忘れずに提出しましょう。

Q5. 退職金は退職時の給料がベースになるのですか?

はい。基本額は「退職日の俸給月額 × 支給率」で計算されるため、これまでの平均ではなく、辞めるときの俸給月額がベースになります。昇給・昇格して俸給が上がってから辞めるほど、基本額は大きくなります。

Q6. 転職で退職金が減るなら、辞めないほうが得ですか?

退職金だけを見れば、定年まで勤めたほうが多くもらえます。ただ、満額の退職金をもらうには定年まで勤め続ける必要があります。途中で辞めて別のキャリアを選ぶなら、退職金の差額は「キャリアを変える選択のコスト」です。私は、その差額以上に新しい仕事で得られる経験やスキル、将来の選択肢に価値があると判断して転職しました。退職金の増減と、新しいキャリアで得られるものを並べて比べることをおすすめします。

Q7. 退職金はどう使うのがよいですか?

使い道を「受け取る前に」決めておくことをおすすめします。まとまったお金が入ると気が大きくなり、計画がないとなんとなく目減りしてしまいます。私は、生活防衛資金と新生活の準備費用を先に確保し、残りを長期の積立投資に回すと決めてから受け取りました。退職金は再現性のない一時金なので、感情ではなく計画で扱うのが安全です。


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