世帯年収1,000万円台で子ども2人を東京で中学受験させたら家計は持つのか【100歳までの年次試算】

世帯年収1,000万円台で子ども2人を東京で中学受験させたら家計は持つのか【100歳までの年次試算】
目次

「子ども2人を中学受験させたいけれど、うちの家計で本当に大丈夫なのか」

この問いに、感覚ではなく数字で答えたいと思いました。私自身が2人の子ども(3歳と0歳)を育てていて、いずれ直面する問題だからです。

そこで、自作のライフプランシミュレーターの計算ロジックを直接呼び出し、100歳までの資産推移を1年刻みで出しました。条件は「夫婦共働き・子ども2人を東京で中学受験させ、2人とも私立理系大学に進学」です。

結論から書くと、分かれ目はたった1つ、昇給するかどうかでした。そして最も危ないのは老後ではなく、47歳から55歳のあたりだという結果になりました。


結論:3ケースのうち1つだけ、72歳で資産が尽きる

先に結果です。30代・二人以上世帯の金融資産の中央値311万円から出発した場合の到達点がこちらです。

ケース65歳時点資産が尽きる年齢
最悪(昇給ゼロ・インフレ2%・利回り2%)2,181万円72歳で枯渇
平均(昇給あり・インフレ1%・利回り4%)2億1,217万円尽きない
良い(昇給多め・インフレ0%・利回り5%)3億859万円尽きない

同じ家族構成・同じ教育方針でも、前提の置き方で結末が正反対になります。そして3ケースを分けている最大の要因は、利回りでもインフレでもなく昇給でした。理由は後述します。


前提:資産は「統計の中央値」から出発する

試算にあたって、出発点の資産は統計値を使いました。わが家の実際の数字をそのまま出しても、読む方の参考になりにくいからです。

使ったのは、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」です。二人以上世帯・世帯主30歳代の金融資産保有額は次のとおりでした(金融資産を保有していない世帯を含む集計)。

年代平均値中央値
20歳代525万円125万円
30歳代1,096万円311万円
40歳代1,486万円500万円
50歳代1,908万円700万円
60歳代2,683万円1,400万円

平均値と中央値が3.5倍も開いているのは、一部の資産家が平均を押し上げているからです。実感に近いのは中央値の311万円のほうなので、こちらをメインケースにしました(平均1,096万円で始めた場合は後半で触れます)。

その他の前提はこうです。

項目設定
夫婦の年齢35歳・31歳(ともに会社員)
世帯の手取り年収890万円(額面で1,100万円台)
子ども3歳と0歳の2人
生活費年445〜505万円(住居費込み・教育費は別)
積立投資月13万円
住まい賃貸(住宅ローンなし)

夫婦ともに65歳まで働き、65歳から世帯で月22万円の年金を受け取る想定です。退職金と児童手当は計算に入れていません(どちらもプラス方向に効きます)。なお、わが家が資産形成をどう組み立ててきたかは金融資産2,000万円までのロードマップに書いています。


教育費はいくらかかるのか:2人で3,838万円

中学受験を前提にすると、教育費はこうなりました。

進路1人あたり2人合計
中学から私立+私立理系大学(自宅通学)1,919万円3,838万円
中学から私立+私立理系大学(下宿)2,280万円4,560万円

教育費のベースは文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の学習費総額(塾・習い事代込み)と、日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」の大学費用です。

ただし、この平均値には東京の中学受験塾の実費が収まりきりません。都内の大手進学塾は小4〜小6の3年間で250〜300万円というのが相場です。そこで試算では、1人あたり280万円を小4〜小6に上乗せしました。子どもが2人いると、この塾代が夫41歳から46歳まで6年連続で発生します。

教育費のピークは53歳・年455万円

最も重いのは、夫53歳の年でした。

  • 上の子(21歳)が私立理系大学の4年生
  • 下の子(18歳)が私立理系大学に入学(入学金が乗る)

この年だけで年455万円。2人とも下宿するなら636万円です。世帯手取りが890万円のとき、教育費だけで年収の半分が消える計算になります。


3つのケースの中身

最悪平均良い
運用利回り2%4%5%
インフレ率2%1%0%
世帯の昇給率0%年約2%年約2.8%
家賃15万円12万円10万円
大学2人とも下宿自宅通学自宅通学

最悪ケースは「30年間まったく昇給せず、物価だけが上がり、運用も振るわず、2人とも下宿する」という、悪い条件を全部重ねたものです。良いケースはその逆。現実の着地は平均ケースの周辺だと考えるのが自然でしょう。


年次推移:100歳までの資産と世帯手取り

中央値311万円から出発した場合の推移です。金額はすべて万円。

夫妻世帯手取り(最悪/平均/良い)最悪平均良い
35歳31歳890/890/890680718743
40歳36歳890/984/1,0202,3072,9503,305
43歳39歳890/1,045/1,1072,8144,1814,917
46歳42歳890/1,110/1,2012,8795,2796,554
50歳46歳890/1,204/1,3392,6397,0609,334
53歳49歳890/1,280/1,4541,8828,56811,830
55歳51歳890/1,333/1,5351,70310,07914,128
60歳56歳890/1,477/1,7602,07315,23821,766
65歳61歳724/1,229/1,3812,18121,21730,859
70歳66歳264/264/26460024,73236,950
72歳68歳264/264/264枯渇––
80歳76歳264/264/264▲6,22627,63545,635
100歳96歳264/264/264▲32,10741,44484,928

最悪ケースの「▲」は、取り崩す資産がなくなった後の不足額です。実際には生活費を削るか働き続けることになるので、そのまま借金になるわけではありません。何年分の生活費が足りないかを可視化した数字として見てください。


最悪ケースはなぜ72歳で尽きるのか

原因は老後ではなく、現役時代の後半にあります。年間収支(収入-生活費-教育費-塾代)の推移を見ると、それがはっきり出ます。

夫の年齢年間収支
40歳+277万円
43歳+132万円
44歳+1万円
46歳▲24万円
50歳▲270万円
53歳▲467万円
56歳▲149万円

44歳で収支がゼロになり、そこから12年間ずっと赤字が続きます。手取りが890万円に固定されたまま、インフレで生活費だけが膨らみ、そこへ中学受験塾 → 私立中高 → 私立理系大学×2人+下宿が順番に乗ってくるからです。

この間に資産は2,879万円(46歳)から1,703万円(55歳)まで削られます。その後いったん回復するものの、年金264万円では老後の生活費を賄えず、70代前半で底をつきます。

つまりこのケースが破綻する本当の原因は、老後資金の不足ではなく、40代後半から50代前半にかけて資産を取り崩してしまい、複利が効く期間を失ったことにあります。


分かれ目は「昇給」だった

最悪ケースと平均ケースの違いは、利回り2ポイント・インフレ1ポイント・下宿の有無と複数ありますが、最も効いているのは昇給です。

平均ケースでは、世帯手取りが890万円から53歳時点で1,280万円まで伸びます。教育費のピークと、収入のピークが重なるのです。だから455万円の教育費が来ても年263万円の黒字を維持できます。

一方、昇給ゼロだと収入は890万円のまま。同じ年に467万円の赤字になります。その差は年730万円です。

利回りを2%から4%に上げても、この差は埋まりません。40代後半の資産は3,000万円前後なので、2ポイントの差は年60万円程度にしかならないからです。この時期の家計を支えるのは、運用益ではなく給与だと、数字がはっきり示しています。


出発点が平均1,096万円なら、結果は変わるか

ほとんど変わりませんでした。

中央値311万円スタート平均1,096万円スタート
最悪ケースの枯渇72歳74歳
平均ケースの65歳時点2億1,217万円2億3,391万円

出発点で785万円の差があっても、枯渇はたった2年しか延びません。

これは重要な発見だと思います。「今いくら持っているか」より、「毎年いくら増やせるか」のほうが圧倒的に効くということです。785万円の差は、昇給ありとなしの差(年730万円)のわずか1年分でしかありません。

同じことは積立額にも言えます。今ある資産を気にするより、収入を伸ばすか支出を抑えるかして、毎年の余剰を作るほうが結果を大きく動かします。まだ積立を始めていない方は、NISAの始め方から着手するのが一番早いはずです。固定費の削り方は楽天経済圏の見直し記録にまとめています。


この結果を受けて、私が考えたこと

1. 40代前半に、もう一度試算する

今の時点で何かを変える必要はないと思いました。リスクゾーンは47歳から55歳で、まだ10年以上先です。その頃には、

  • 塾代が実際にいくらかかったか
  • 大学が自宅通学か下宿か
  • そのとき昇給がどこまで進んでいるか

この3つが見えています。40代前半に実額で引き直すのが、いま決められる唯一の具体策だと考えました。

2. 「中学受験をするか」は家計だけでは決まらない

平均ケースなら教育費3,838万円を吸収できます。つまり家計は中学受験の可否を決める要因にならない、というのがこの試算の答えです。

判断材料になるのは、子ども本人の希望や通学時間、家族の時間の使い方といった、お金以外の要素でしょう。少なくとも「お金がないから諦める」という判断を、この条件で下す必要はなさそうです。

3. 教育資金は使う時期から逆算して置き場所を決める

教育費のピークが53歳と分かっているなら、そこから逆算できます。わが家は子どもの教育資金を投資で準備していますが、使う時期が2〜3年先に見えてきたら段階的に現金化する方針です。直前の暴落だけは避けたいからです。

この考え方は学資保険ではなくNISAを選んだ理由に書いたとおりで、2027年1月に始まるこどもNISAも同じ枠組みで使うつもりです。児童手当の運用については児童手当を全額S&P500に入れている話にまとめています。


この試算の限界(正直に書きます)

鵜呑みにしないでいただきたい点が4つあります。

  1. 配当・分配金の課税を計算していません。 投資資産の全額に単一の利回りを掛け、取り崩しもNISA前提で非課税として扱っています。特定口座の高配当株の比率が高い場合、実質利回りは表示より0.5ポイントほど低く見るべきです
  2. 退職金・児童手当・iDeCoを入れていません。 いずれもプラス方向なので、実際はこの試算より有利になります(私がiDeCoを使っていない理由はこちら)
  3. 塾代は1人280万円の想定です。志望校や通う年数で大きく変わります
  4. 昇給率・利回り・インフレ率が毎年一定という仮定です。現実には上下します

それでも、「どの変数が結果を最も動かすか」を知る目的には十分だと考えています。今回で言えば、それが昇給だったという話です。

同じ条件をライフプランシミュレーターで試せます。ご自身の数字を入れると結論が変わるかもしれません。入力はブラウザ内で完結し、外部に送信されません。使い方は公開時の記事にまとめています。


まとめ

  • 子ども2人を中学から私立+私立理系大学に進ませると、教育費は2人で3,838万円(下宿なら4,560万円)
  • ピークは53歳・年455万円。世帯手取りの半分が教育費に消える
  • 30代の金融資産の中央値311万円から出発しても、昇給があれば家計は持つ
  • 昇給ゼロ・インフレ2%だと72歳で資産が尽きる。原因は老後ではなく、44歳から始まる12年間の赤字
  • 出発点が中央値311万円か平均1,096万円かの差は、枯渇時期を2年延ばすだけ。今の残高より、毎年の余剰のほうが効く
  • 具体策は「40代前半に実額で引き直す」こと

「教育費が心配だから中学受験は無理」と感じている方は、一度自分の数字で確かめてみてください。感覚より、案外いけるかもしれません。少なくとも私は、この試算をやってみて、漠然とした不安が「47歳から55歳に注意すればいい」という具体的な課題に変わりました。


よくある質問(FAQ)

Q1. 世帯年収1,000万円台なら、中学受験は問題なくできますか?

この試算の条件(夫婦とも65歳まで働き、昇給があり、住宅ローンなし)であれば、教育費3,838万円は吸収できました。ただし住宅ローンがある場合や、片働きの場合は結果が変わります。特に40代後半から50代前半の収支が重要なので、その時期に赤字が続かないかを確認してください。

Q2. 教育費のピークはいつ来ますか?

この試算では夫53歳(上の子が大学4年、下の子が大学1年)で、年455万円でした。2人とも下宿する場合は636万円です。子ども2人の年齢差が3歳だと大学期間が重なるため、ピークが高くなります。年齢差が5歳以上あると、ピークは低く長くなります。

Q3. 東京の中学受験の塾代はいくら見ておけばいいですか?

この試算では1人280万円(小4〜小6の3年間)としました。都内の大手進学塾は年間100万円前後で、6年生は講習や志望校対策が増えるためさらに上がります。文部科学省の学習費調査の平均値には収まらないので、別枠で見積もることをおすすめします。

Q4. 資産が尽きるかどうかを最も左右するのは何ですか?

昇給です。この試算では、昇給ゼロと昇給ありで53歳時点の年間収支が730万円変わりました。運用利回りを2ポイント上げても、40代の資産規模では年60万円程度の差にしかなりません。現役時代の家計を支えるのは運用益ではなく給与だという結果でした。

Q5. 今の貯蓄が少なくても間に合いますか?

出発点を中央値311万円から平均1,096万円に変えても、最悪ケースの枯渇時期は72歳から74歳に延びただけでした。785万円の差より、毎年いくら積み上げられるかのほうが結果を大きく動かします。今の残高が少ないことを理由に諦める必要はありません。

Q6. この試算に退職金や児童手当は入っていますか?

入っていません。どちらもプラス方向に効くため、実際の家計はこの試算より有利になります。退職金の目安は退職金シミュレーターで試算できます。

Q7. 老後の生活費はどう設定していますか?

現役時代の生活費の80%としました。年金は世帯で月22万円(年264万円)、65歳から受給する前提です。最悪ケースではインフレで生活費が膨らむため、この年金額では足りず、資産の取り崩しが続く結果になりました。


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※本記事は2026年9月時点の公表資料をもとにした概算です。出発点の資産は金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」、教育費は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」および日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」を参照しています。私はFP3級保有者ですが、投資助言・税務相談を行う立場ではありません。詳細は免責事項をご確認ください。

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