がん保険・医療保険を全部解約した話【FP3級・夫婦月1万円の保険料が消えた瞬間】

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がん保険・医療保険を全部解約した話【FP3級・夫婦月1万円の保険料が消えた瞬間】
目次

「がん保険があれば、もしものとき安心」——そう信じていた時期がありました。

私と妻は、長年がん保険・医療保険に加入してきました。月々の保険料は夫婦合わせて約1万円。年間で約12万円、10年で120万円。それを「家族を守るための投資」と思って払い続けていたのです。

でも、ある日全部解約しました。「がん保険はがんから守ってくれるわけではなかった」——その当たり前の事実に、ようやく気づいたからです。

この記事では、夫婦で月1万円の医療保障をすべて解約するまでに何を学び、何に気づいたかを、FP3級と山崎元氏の遺著を頼りに整理します。


我が家の経緯——親のがん死から生まれた「漠然とした不安」

最初に正直に書きます。

私と妻のそれぞれの親が、30代前半でがんで亡くなっています。

若くしてがんで親を失った経験は、「自分たちも遺伝的に若くしてがんになるかもしれない」という漠然とした不安を、我が家にずっと植え付けていました。

その不安への「対処」として選んだのが、がん保険・医療保険への加入でした。営業に勧められたわけではなく、自分たちの意志で「もしもの備え」として加入していたのです。


加入していた医療保障の全貌

解約前、我が家には4つの医療保障がありました。

①〜③ アクサ生命:がん保険+医療保険+先進医療特約

  • がん診断時の一時金
  • 入院給付金(日額型)
  • 通院給付金
  • 先進医療特約

④ 公務員共済組合の団体医療保険

  • 共済組合の福利厚生として加入できる団体医療保険
  • 民間より割安な掛金で同等の保障

これら4つの保障の月々合計が、夫婦合わせて約1万円でした。年間12万円、10年で120万円——「もしものために」というフレーズで、これだけのお金を払い続けていたわけです。


解約を決めた2つのきっかけ

きっかけ① FP3級の取得

私は2024年にFP(ファイナンシャル・プランナー)3級を取得しました。

FP3級の試験範囲には、生命保険・医療保険の制度設計と公的保険制度の概要が含まれます。

体系的に学んでみて、初めて気づいたのです。

  • 日本の公的医療保険は世界最高峰の手厚さがあること
  • 民間医療保険の給付内容は、公的保険でカバーできる範囲のごく一部を「上乗せ」しているだけのこと
  • がん保険・医療保険の保険料の大半は「不安への課金」であって、合理的な保障コストの対価ではないこと

きっかけ② 山崎元氏の遺著『がんになってわかった お金と人生の本質』

経済評論家の山崎元氏は、2022年に食道がんが見つかり、闘病の末2024年に逝去されました。その最後の著作として刊行されたのが、『がんになってわかった お金と人生の本質』です(朝日新聞出版、2024年7月)。

山崎氏ご自身ががん患者として経験したからこそ書ける、本物の説得力がありました。本の核心は、シンプルです。

  • がん保険は「がん」から守ってくれるわけではない——がん細胞は契約の有無と関係なく増殖する
  • 保険でカバーされるのは治療の自己負担の一部であり、それ自体は公的医療保険でも十分対応可能
  • 「不安への対価」として保険料を払うのは、合理的な経済判断ではない——本当に必要なのは、何かあった時に困らないだけの貯蓄と、正しい知識

「がん保険があれば安心」と思っていた私の前提は、この本で完全に崩されました。


がん保険・医療保険の「商品の中身」を分解する

そもそも、私たちが「保障」だと思っていたものは、具体的にどんな給付の組み合わせだったのか。

給付種類内容実際の支払条件
診断一時金がんと診断されたら一時金が支払われる上皮内新生物は対象外 or 減額の商品が多い。給付回数や期間制限あり
入院給付金入院日数×日額入院日数の短期化で実支給額が想定より少ないケースが増加
**通院給付金退院後の通院日数に応じて支給「入院に伴う通院」が条件の商品も。通院単独治療**は対象外
手術給付金手術1回ごとに支給約款指定の手術のみ。指定外の手術は対象外
先進医療特約先進医療の技術料を保障治療時点で先進医療リストに載っているものが対象(後述の落とし穴あり)

ここで重要なのは、どの給付も「治療を受けた事実」を保険会社が認めた範囲でしか払われない点です。約款を読まないと、「カバーされていると思っていたが実は対象外だった」というケースは普通にあります。


先進医療特約の重大な落とし穴

私たちが特に重視していたのが先進医療特約でした。「先進医療なら数百万円かかる治療もカバーされる」という説明を受け、「いつかの大病に備えて」と思って付帯していました。

しかし、よく調べてみると、先進医療特約には致命的な構造上の問題がありました。

落とし穴①:保障されるのは「治療時点」の先進医療

先進医療特約は、契約時ではなく、治療を受けた時点で「先進医療」として認められている技術が対象です(東京海上日動あんしん生命解説)。

つまり:

  • 契約時に「これは将来役立つ」と思っていた技術が、治療時点で先進医療リストから外れていれば保障されません

落とし穴②:「保険適用」になった技術は、先進医療から外れる

これがもっとも見落とされがちな点です。

先進医療とは、「標準治療として効果が実証されていく途上の医療技術」のこと。エビデンスが蓄積し、治療効果が認められると 公的医療保険の適用対象になります。保険適用された瞬間、その技術は「先進医療」から外れるため、先進医療特約の対象からも外れます

実例:陽子線治療のうち、小児がんや前立腺がんの一部に対するものは、すでに先進医療から削除され公的医療保険の対象になっています。

つまり、「先進医療特約に入っていれば最新治療に備えられる」というイメージは、実態とずれているのです。本当に効果がある治療法は標準治療化されて公的保険でカバーされ、特約から外れていく。残るのは「まだ効果が実証されていない(エビデンスが集まっていない)治療」だけ、という構造です。

落とし穴③:将来の新技術は「特約に含まれる保証はない」

「将来、新しい治療法が出てきたときのために」と先進医療特約に入る人は多いですが、将来出てくる治療法が必ず先進医療として認可される保証はありません。また、認可されても実施できる医療機関は限定されています(JA共済の解説)。

「将来の安心のため」と思って払っていた先進医療特約の保険料は、「もしかすると将来の自分には全く役に立たない可能性が高い」のです。


公的保険制度の徹底解説

民間の医療保険を解約できると判断できたのは、日本の公的保険制度を体系的に理解したからです。FP3級で学ぶ範囲ですが、これだけで医療費の備えはほぼ完結します。

① 高額療養費制度——医療費の自己負担に上限がある

公的医療保険には、月の医療費自己負担に上限額を設ける高額療養費制度があります。

所得区分月の自己負担上限
年収約1,160万円以上252,600円+(医療費−842,000円)×1%
年収約770〜1,160万円167,400円+(医療費−558,000円)×1%
年収約370〜770万円80,100円+(医療費−267,000円)×1%
年収約370万円以下57,600円(定額)
住民税非課税世帯35,400円(定額)

例えば年収500万円の世帯で、医療費が月100万円かかったとすると、自己負担は約8.7万円に収まります(80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%)。残りは公的保険から給付されます。

さらに、同じ世帯で複数の医療費が発生したり、同一人物で12ヶ月以内に3回以上高額療養費に該当したりすると、4回目以降の上限額がさらに引き下がる「多数回該当」の仕組みもあります。

なお、我が家は実際に出産でこの制度を2回体験しました。吸引分娩(保険適用)と正常分娩(適用外)で自己負担がどう変わったかは、高額療養費制度を出産で2回体験した話で詳しく書いています。

② 健康保険組合・共済組合の「付加給付」

会社員や公務員が加入している健康保険組合・共済組合の多くには、付加給付(一部負担金払戻金)という独自制度があります。

代表的なパターンは「1ヶ月の自己負担が約2万5,000円を超えた分を組合が補填」というもの。これにより、高額療養費の上限が更に下がり、実質月数万円以下に抑えられるケースが多くあります。

会社員・公務員の方は、まず自分が所属する健康保険組合・共済組合の付加給付の有無を確認してください。組合の公式サイトや組合員ハンドブックに記載されています。

③ 傷病手当金——「働けない期間」の所得補償

傷病手当金は、業務外の病気やケガで仕事を休んだ際の所得補償です。

  • 連続3日間の待期期間後、4日目から支給
  • 支給期間は通算で1年6ヶ月
  • 支給額は標準報酬月額の3分の2相当

つまり、がんの治療で長期入院・通院することになっても、最大1年6ヶ月は給与の2/3が公的に補償されるわけです。

④ 障害年金——長期にわたる就労困難への備え

がんの治療や後遺症で長期間就労できない場合、障害年金の対象になるケースもあります。

国民年金加入者は障害基礎年金、厚生年金・共済加入者は障害厚生年金まで受けられる可能性があり、月数万円から十数万円の年金が支給されることがあります。

⑤ 自立支援医療・指定難病医療費助成

がんの種類によっては、指定難病として医療費が公費負担になる場合もあります。自治体ごとの助成制度も存在します。


シミュレーション:もし今がんになったら、いくらかかるか

具体的に試算してみます。年収500万円・年収約370〜770万円帯の世帯で、以下のようながん治療を受けたと仮定します。

  • 入院30日(手術1回):医療費総額150万円
  • 退院後の通院治療6ヶ月:医療費総額60万円

公的保険のみの自己負担

期間医療費総額高額療養費後の自己負担
入院月150万円95,830円(80,100円+(1,500,000−267,000)×1%)
通院月(×6ヶ月)各10万円81,100円/月(80,100円+(100,000−267,000)×1%だが負担ベースで80,100円)
合計(高額療養費だけ)210万円約58万円

健康保険組合・共済組合の付加給付があった場合

会社員・公務員の場合、付加給付で月の自己負担を2万5千〜3万円程度に抑えられるケースが多く、合計自己負担は20〜25万円程度に収まることもあります。

傷病手当金で所得補償

  • 治療期間中は給与が出なくとも、標準報酬月額の2/3が傷病手当金で給付
  • 年収500万円なら、月約27万円が補償される計算

結論:貯蓄60〜100万円があれば、医療保険なしでもがんに対応できる

月8.7万円の医療費上限+付加給付+傷病手当金+貯蓄——この組み合わせがあれば、月1万円の医療保険料を払い続ける合理性は完全に消えます


医療保険の構造的問題——入院日数の短期化

民間の医療保険の中核は入院日額×日数ですが、医療技術の進歩により入院日数は年々短くなっています

厚生労働省「患者調査」によれば、平均在院日数の推移は以下のとおり。

年度全傷病平均在院日数
平成2年(1990年)44.9日
平成17年(2005年)37.5日
平成29年(2017年)29.3日
令和2年(2020年)27.5日

つまり、「入院日額×日数」型の医療保険は、時代とともに支払額が縮小する構造を持っています。

加えて、近年のがん治療は通院・外来化学療法にシフトしています。「入院給付があれば安心」と思っても、そもそも入院せずに通院で治療が完結することが増えているのです。


我が家の現在の備え方

民間の医療保険を全部解約した我が家は、現在以下の組み合わせで医療リスクに備えています。

① 公的医療保険+付加給付(最強の基盤)

健康保険組合(または共済組合)の付加給付があるおかげで、月の医療費自己負担は実質2〜3万円程度に抑えられます。

② 傷病手当金(働けない期間の所得補償)

最大1年6ヶ月・給与の2/3。これだけあれば、長期治療でも生活は破綻しません。

③ 生活防衛費(現金で6ヶ月分)

万一の医療費・所得減少に備えて、生活費6ヶ月分の現金を確保。民間医療保険の代わりに、自分で「現金プール」を持つ発想です。

④ NISAでの資産形成

旧つみたてNISA・新NISAでの長期積立。いざという時の追加流動性源として機能します。

⑤ 配偶者の所得

夫婦共働きであれば、片方ががんになってももう片方の収入で家計の基盤が維持できます。これは大きな保険でもあります。


がん保険・医療保険の解約で得たもの

夫婦で月1万円の医療保険を解約して、得たものは以下です。

項目内容
キャッシュフロー月1万円・年12万円が手元に残る
NISAへの追加投資原資解約浮いた分を新NISAに毎月積立
「不安からの自由」「保険があるから安心」ではなく「制度を理解しているから対応できる」という確信に変わる
時間的自由約款を読み返す時間、特約を確認する時間が消えた

不安への課金」をやめると、生活はずっと身軽になります。


これから加入を検討しているあなたへ

がん保険・医療保険への加入を検討する前に、以下のチェックリストを必ず確認してください

加入前に確認すべき5つの公的制度

  1. 高額療養費制度——あなたの所得区分での月額自己負担上限はいくらか?
  2. 健康保険組合・共済組合の付加給付——加入組合の規約に「一部負担金払戻金」「付加給付」の項目はあるか?
  3. 傷病手当金——会社員・公務員なら、最大1年6ヶ月・給与の2/3が補償されることを認識しているか?
  4. 障害年金——長期就労困難になった場合に受給可能な年金額を試算したか?
  5. 配偶者・家族の所得——世帯としての所得補完体制はあるか?

約款を読むときの注意点3つ

  • 「対象外」となる条件を必ず確認(上皮内新生物・特定の手術・通院単独治療など)
  • 先進医療特約は「治療時の先進医療リスト」が対象であり、保険適用化された治療は対象外
  • 給付の上限回数・期間を必ず確認

これらを確認した上で、それでも「保険が必要」と判断するなら加入する。順番が逆だと、不安に課金するだけの契約になります。


まとめ

項目内容
加入していた保障アクサ生命がん保険・医療保険・先進医療特約/公務員共済組合の団体医療保険
月々の保険料夫婦合算で約1万円(年12万円・10年で120万円)
解約のきっかけFP3級取得+山崎元『がんになってわかったお金と人生の本質』
先進医療特約の問題治療時の先進医療リストが対象。保険適用化された治療は対象外
公的保険の備え高額療養費制度(月約8.7万円上限)+健康保険組合付加給付+傷病手当金(給与2/3・1年6ヶ月)
現在の備え公的保険+生活防衛費6ヶ月分+NISA+配偶者所得

おすすめ書籍

📚 山崎元『がんになってわかった お金と人生の本質』

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山崎元氏が自身のがん闘病経験から書き上げた遺著。当事者の視点でがん保険・医療保険の本質に切り込み、「保険は『安心の道具』ではない」ことを明確にしてくれます。私と妻ががん保険・医療保険を解約する決断ができたのは、この本のおかげです。

📚 山崎元『新NISA対応 超改訂版 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』

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保険を解約した後の運用先として、新NISA活用法を学べる定番の一冊。「保険から投資へ」の流れを一気に理解できます

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よくある質問(FAQ)

Q1. 家族にがん患者が多くてもがん保険は不要ですか?

私と妻のそれぞれの親ががんで亡くなっています。それでも我が家はがん保険を解約しました。理由は「がん保険は経済的損失をカバーするものであり、がんを予防するものではない」から。家族歴があるなら、保険料に使うお金を定期検診の徹底生活防衛費の積み増しに回すほうが合理的です。「不安」と「合理性」は別物として整理してください。

Q2. 子どもの医療保険は必要ですか?

ほとんどのケースで不要です。子どもは乳幼児医療費助成制度で多くの自治体で医療費が無料または低額に抑えられます。地域差があるので、自治体の助成制度を必ず確認してください。

Q3. 先進医療特約だけ残すのはアリですか?

考え方次第ですが、月数百円の特約料に対して、給付の不確実性が高いことを理解した上で判断してください。「将来役に立つかもしれない」という期待値で払う特約料は、長期で見ると「先進医療リストに技術が残り、治療を受け、医療機関が対応していた」という複数条件をすべて満たした時のみ意味を持ちます

Q4. 自営業・フリーランスでも医療保険は不要ですか?

会社員・公務員と比べると、傷病手当金が国民健康保険にはないため、所得補償の観点で備えは厚めにする必要があります。ただし、その備えも民間医療保険ではなく現金プール(生活防衛費を厚く)や所得補償保険・就業不能保険で検討する方が合理的です。

Q5. がんになった時の精神的サポートはどうしますか?

がん保険の本当の価値は「お金」より「精神的な安心感」だという主張もあります。これは否定しません。しかし、その安心感に夫婦で月1万円・10年で120万円を払う合理性があるかは別問題です。私たちは「公的制度の理解」と「貯蓄」で同等の安心感を得られると判断しました。

Q6. 健康保険組合の付加給付がない人はどうしますか?

国民健康保険加入者や、付加給付のない健保組合に加入している場合は、高額療養費制度の上限額(月約8.7万円)が実質的な医療費上限になります。この場合は、生活防衛費を厚めに確保(6ヶ月→12ヶ月分など)することで対応可能です。それでも民間医療保険の月数千円〜1万円の保険料を10年単位で払い続けるよりは合理的です。

Q7. 共済組合の団体医療保険は割安なのでは?

民間より割安なのは事実です。しかし、「割安」と「不要」は別の判断です。我が家は共済の団体医療保険も含めて全部解約しました。割安でも、公的保険+付加給付でカバーされる範囲を重複して保障する必要はないと判断したからです。


終わりに——「不安」を「制度の理解」に置き換える

がん保険・医療保険の本質は、「不安への課金」です。

不安は人間にとって自然な感情なので、それを否定するつもりはありません。でも、「不安に対して保険料を払う」のと、「不安に対して制度を学ぶ」のとでは、得られるリターンが桁違いに違う——これがFP3級取得と山崎元氏の遺著で私が気づいたことです。

夫婦で月1万円・10年で120万円。この金額が「不安への課金」として消えていたという事実は、振り返ると恐ろしいものがあります。

この記事が、あなたが同じ「不安への課金」をやめるきっかけになれば嬉しいです。


※本記事は運営者個人の体験・調査に基づくものです。具体的な保険・医療判断はご自身でFP・医師・税理士等の専門家にもご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。